小池都知事の野望が加速している。
総理大臣になりたい。
その思いが彼女を突き動かしている。
最大与党の自民党にいれば、総理大臣になれる可能性はある。しかしながら、待てど暮らせどそのチャンスは一向に回ってこなかった。シビレをきらした彼女はひとつの大きな賭けに出た。
それが都知事選だ。
その策略は見事に当たり、小池旋風なるものを産み出して都知事に当選した。小池百合子ここにあり。ということを強烈にアピールしたのだ。風は都議選で更に強くなり、まさに圧勝という形で自民党に大差をつけた。
安倍一強に対抗できるのは小池百合子しかいない。
真っ先に反応したのは危機に陥っている民進党だ。蓮舫、山尾両氏の失脚で民進党は空中分解寸前まで追い込まれており、落選したくない議員たちが雪崩を打つように離党しはじめている。
まさに野党再編の始まりだ。
今まで自民党に対抗しうる勢力が育たなかった理由のひとつが核となる人物が居なかったことだ。この指止まれと手を挙げる者はいても、皆、核にはなりえなかった。野党最大のチャンスが、いま到来しようとしている。小池百合子氏を核とした自民対抗勢力が生まれれば、無党派層を取り込むことができ、２大政党制の形はできあがる。
だが、最大の問題は小池百合子氏が東京都知事の職にあるということだ。
フリーの身であれば何の問題もなかった。衆議院選挙に立候補し、自らの手で政権奪還を成就できたかもしれないからだ。
都知事選挙に出馬しないで衆議院選挙まで待ったほうがよかったのに、と思う人がいるかもしれないが、それは違う。この小池旋風は都知事選で勝ったからこそ起きた風だ。それまで鳴かず飛ばずの議員生活だった小池氏が俄然注目を集めるようになったのは都知事選に出たからだ。無謀な挑戦と冷笑する声もあったが、オジサン対マドンナの構図は旧態勢力と新改革勢力の戦いに映り、石原氏の失言なども追い風に小池旋風となった。まるで悪代官を成敗する時代劇を見るかのように人びとは熱狂し興奮した。まさに小池劇場。都民が作り上げたニューヒロインだ。だからこそ、核となりえたのだ。衆議院選挙のコマの一人として出馬しても、これほどの風は吹かなかったに違いない。
小池人気と今の政局を見れば、最大のチャンスであることは明らかだ。
都知事の職をなげうって衆院選に出馬するのか、それとも都民との約束を優先するのか。出馬すれば日本初の女性総理大臣という野望が実現するかもしれない。しかし、都知事を辞めれば無責任という批判がおこりかねない。まかり間違えば小池旋風が逆風に変わる可能性さえある。
豊洲への移転を延期したことによる維持費や補償費用などの負担に加え、都知事選挙の費用も重なるとなれば、不満の矛先は小池氏に向かうだろう。そうなってしまったら、総理どころの話ではない。政治家生命にも関わる大問題だ。
いま小池氏は都民や国民の反応をじっと見ている。彼らの中から女性総理待望論が出てくれば、待ってましたとばかりに決断するに違いない。
都知事を捨て総理の椅子を目指すという決断は小池百合子という政治家を端的に象徴している。彼女はこれまでに数々の政党を渡り歩いてきた。その時々の風を読み、自身にプラスになる方を選択してきたのだ。
都知事としての仕事をキャンセルし始めていることからも分かるように、彼女の中では、もう既に都知事に興味はない。心は総理の椅子に釘付けなのだ
